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タムタム草紙

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すずの兵隊さん


あるところに、一本足のすずの兵隊さんがいました。
古いスプーンから生まれた25人の兄弟のうち、
一番おしまいにつくられたので、
そのときには、もう材料のすずが足りなくなっていたのです。

でもその兵隊さんは、一本足でも、
ほかの二本足の兵隊さんに負けないくらい、
しっかりと立っていました。

兵隊さんは、子供部屋のおもちゃでした。
テーブルの上には、いろんなおもちゃが置いてありましたが、
兵隊さんは、紙でつくったきれいなお城に立つ、
小さな踊り子が好きでした。
踊り子も紙でしたが、
スカートはきれいなリンネルで、
金モールの飾りがついていました。


とても辛い旅から帰って来たとき、
兵隊さんは紙の踊り子を見つめました。
踊り子も兵隊さんを見つめました。
でも、二人とも何にも言いませんでした。


b0181015_1744750.jpg


突然、いたずらな男の子が、
すずの兵隊さんを、ストーブの中へ投げ込みました。
兵隊さんは、炎にあかあかと照らされて、
おそろしいあつさを感じました。
けれども、そのあつさは、本当の火のための熱なのか、
心の中に燃えている愛の熱なのか、はっきりわかりませんでした。

兵隊さんは自分の体がとけていくのを感じました。
それでも、やっぱり鉄砲をかついだまま、
踊り子を見つめて、しっかりと立っているのでした。


そのとき、突然ドアがあいて、
風がさっとふきこんできました。
紙の踊り子は空気の精のように、ひらひらと舞って、
ストーブの兵隊さんのところへ飛んでゆきました。

あっというまに、二人はめらめらと燃えあがりました。

あくる朝、お手伝いさんがストーブの灰をかきだすと、
小さなハート型のすずのかたまりと、
真っ黒こげになった、金モールかざりが見つかったという事です。

        ☆「アンデルセン童話集」講談社青い鳥文庫より






by tamtamsun | 2010-05-24 21:17 | 作品 | Comments(0)
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