最初に沖縄久高島に訪れのは9年前。
その時、ペンションで借してもらった一冊の本。
岡本太郎が撮った久高島のノロさん(神女)。
いつしか、
この一枚の写真が、
私の中で、
久高の神様の象徴のようになっていたのかもしれない。
今年の春に、また久高島に呼んで頂いた。
また久高の神様に助けて頂いた。
私の魂は、美しい伊敷浜の遠く遠く、はるか遠く、
ニライカナイへ帰りたがっていた。
久高から大阪に戻っても、不安だった。
まだまだ弱かった。
この本を思い出し、図書館で借りてきた。
表紙を見た瞬間、なぜか涙があふれた。
仕事机の横に置いて、
いつもチラチラと眺めた。
このノロさんの深い瞳に問いかけた。
「虹のわ」展を始めることになり、
がんばってる時は、嬉しそうにしておられた。
だらけている時は、露骨にあきれておられた。
いい作品が出来た時は、喜んでおられた。
「虹のわ」展の作品を作りながら、
準備をしながら、
もう、スピードが早過ぎて、
自分の内面の変化に着いて行けなくて、
本当に大変で大変で…
頭で考えているヒマなどなく、
虹の輪と共に、
無我夢中で自分探しを続けた。
ある日、いつものように、
ノロさんの瞳に問いかけた。
…応えがない…
じっと眼と眼が見つめ合うだけ。
「…自分に聴いてごらん…」
そう言っておられた。
…そうか、
私はもう自分に問いかけねばならない。
大阪個展中に図書館から留守電が入っていた。
「本が一冊返却期限を過ぎてますので、お返し下さい。」
私は、この本を繰り返し繰り返し借り続けていた。
個展準備の中、図書館へ行くのを忘れていたのだ。
あ… お別れだ。
そう思った。
夜中の図書館裏の返却口。
袋から本を取り出す時、
中に硬貨が一枚入っていたのか、
地面に落ちた。
チャリーーン……
とても清らかな、澄んだ美しい音色だった。
…お別れだ…
私は一人で大泣きしながら、
何度も何度も本を抱きしめ、
お別れをした。
これからは、
自分に問いかけながら歩いてゆかねばならない。
久高の神様は、
私が独り立ちできるまで、
見守っていて下さったのだろう。
なぜこんなに沖縄・久高の神様が、
私を助けて下さるのかは、
わからない。
でも、
久高の神様、
本当にありがとうございます。
私、がんばりますね。